bacho「根無し草」
少し前、TBSラジオのJUNK系を聴いていて、不意にかかった曲がある。
どの番組だったかは忘れた。時期も忘れた。ただ「いい曲だ」という事実だけが残った。
ラジオで音楽に出会うときの最高の体験って、これだと思う。狙っていない。検索していない。アルゴリズムが勧めてきたわけでもない。ただ流れていて、撃ち抜かれる。そういう出会い方が、今でもラジオにはある。
泥臭さ、下北沢感、売れないバンド感
その後、YouTubeで調べて、何度も聴いた。
bacho、「根無し草(NENASHIGUSA)」。
この曲が持っている雰囲気を一言で言うなら、「泥臭さ」だ。
下北沢感、と言い換えてもいい。売れないバンドが小さなライブハウスでやっている、あの感じ。でも「売れない」はネガティブじゃなくて、むしろそこにしかない密度がある。
歌詞のテーマも、そこに通底している。どうしようもない日常、ルーティン、どうしようもない自分。でも、捨てられない衝動。根無し草、という言葉が指しているのは、流されながらも何かを求めている人間の、どうしようもない姿だと思う。
日本の泥臭い系JROCKの、古き良きやつ。そのど真ん中にある。
ボーカルの声質が、全部を語る
曲の構造や歌詞ももちろんそうなのだが、一番効いているのはボーカルの声質だと思っている。
ガラガラした、不器用者の声。うまくないわけじゃないんだが、「うまさ」より「人間」が先に出てくる声だ。磨かれていない感じがある。それが、この曲のテーマとまったく一致している。
声質って、技術じゃなく人間性が出る。感情でも、雰囲気でも、物語でもなくて、その人が生きてきた時間みたいなものが、音にのって直接こちらに届く。理屈じゃなく、胸に来る。そういう力が、このボーカルにはある。
JUNKリスナーに刺さる理由
TBSラジオの深夜JUNKを聴いている層って、ある種の人種だと思う。
深夜に笑いながら、でもどこかで何かを抱えながら聴いている。おもしろくて、でも少し孤独で、日常の細かい不満とか、うまくいかない感じとかを、笑いに変換しながら夜を過ごしている。
そこに「根無し草」がかかる。バチバチに刺さる。それはもう、必然だった。